コンセプトが出来るまで 第6回(最終回)「建築の持つ力を、心から信じること。」
| CONCEPT
「社会・文化・風景・人生・生活」に働きかける力も持っている“建築”。
そんなに大きな影響力のある“建築”なのに、『建築の持つ力』が疎かにされていることも往々にあるような気がする…。
「それでいいのか!!!」とモヤモヤしていたとき、【ハレとケ通信】のインタビューを通じて、設計者のTさんのお話を聞く機会を得ました。
「建築が、逆に地域に社会に働きかけていく、影響を及ぼす、ということは、ありうると思いますか?」
―そう尋ねた私に、その時Tさんが教えてくださったのが、「建築基本法」という存在でした。
(残念ながら日本ではまだ制定・施行が実現されていません)
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…(略)…今こそ既存の枠組みにとらわれずに、より良いものを生産すべきであるという基本的な建築のあり方に対する姿勢を、建築界から発信すべきである。あるべき姿を確認し、そのための技術の使われ方が国民のレベルで納得できるものでなくてはいけない。また建築にかかわる、建築主、設計者、建設業者、行政などそれぞれの立場における役割・責任についても明らかにして、わが国における良好な建築の環境を作り出すことを高らかにうたうべきである。
―建築基本法設立準備会(神田順 起草)より抜粋 *前文も最下部に記載します。
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「!!!! そうか、やっぱり、そうなんだ!!」
“建築の力”って、やっぱりあるんです。
そしてその役割と責任は、係わるひと全てにあるものなんです。
…ということは、例えば施主(建築主)さまが、自身の夢の実現という枠を超えて、
「私の建物は、社会を良くしてるんだ!
風景を美しく、文化を豊かにしているんだ!」
と、胸を張って誇り合える社会が、実現できるはずなんです。
そんな社会に、日本になったらイイな!
そのために、私たちも何かをなしとげたいな!
―そう思ったら、私たちに必要なのは、「建築が好き」という強い思いなんだ、ということが見えてきました。つまり、「建築の持つ力」を、心から信じること、です。
「僕たちの自信、誇りの源となるのは、“建築が好き”という思い。
だから、建設業という仕事そのものにロマンを感じ、自分の子供、孫の代まで「作品」が残るということに感動をもって建築物をつくる。」
「建設業は、確かに厳しい仕事。だからこそ、それを支えるのは『絶対に良い仕事をする!』という気合であり、自己満足に陥らず、他者の長所、意見を取り入れながら、謙虚にとことん“作品”の出来にこだわる姿勢。」(「富士建設の求める社員像」(いずれも当社の社員が作成))
「建築が好き」。
私たちは、この想いを大切に、「建築には未来を変える力がある。」ことを信じ、お客さま(建築主)のために全力を尽くします。
そして、その先には、
「私の建物は、私の人生だけでなく、未来も良い方向に変えているんだ!」
と、お客さまが胸を張って誇り合える社会が、待っているはずです。
さあ、世界で一番カッコイイ!建設業というお仕事。
どんな未来が待っているか、楽しみですね!
*建築基本法設立準備会による「前文」
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建築は、国民の生活の基盤であり、また社会環境を構成する大きな要素である。自然との調和、地域における社会文化、歴史的遺産や伝統の尊重、さらには経済の持続的発展といった国民の基本的な願いを実現するうえで、建築の役割は極めて大きい。
しかしながら、経済的繁栄を優先したために国土の多くを建築物によって占有し、美しく豊かとは言いがたい社会環境を生み出すことがあったことも否定できない。また、建築のあるべき基本理念を十分に顧みることなしに改編を繰り返した建築関連法規によって、法制度上の不整合や学術的な齟齬が生じ、建築の質の向上をさまたげている現状もある。
一方で、一部の事業者や専門家の建築の基本理念を逸脱した行為が、美しい町並みと調和のある国土の形成を阻害し、ひいては建築関連業務への国民の信頼を失わせてきたことも事実といわざるを得ない。このような事態に対処するためには、建築に関わる者すべてが、建築に関する基本理念について改めて確認し、その責務を自覚することが不可欠である。
ここに、建築が安全で美しく豊かな社会環境形成に寄与するための基本理念を宣言し、その基本理念を実現するための各主体の責務を明らかにすることにより、もって健康で文化的な生活の確保に寄与し、私たちの社会の持続的発展と公共の福祉の増進に資するために、建築基本法を制定する。
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